3月27日(火)の午後、音更町文化センターでまちづくり講演会が開かれました。テレビ等のコメンテーターとしてもご活躍中の金子勝氏(慶応義塾大学経済学部教授)が講師を務めました。 テーマは「どうなる?私たちのくらし」と題し、日EU・EPA及びTPP11が地域経済に与える影響について講演されました。
「日本国内の産業は衰退している」
TPP11、日EU・EPAの合意内容は、日本の農業、とりわけ北海道の酪農・畜産農家の経営に甚大な影響を及ぼす懸念があるが、その中身について議論する前に、まず第一に直視しなければいけないことは、どれだけ日本国内の産業が衰退しているかということだと話されました。
バブル崩壊後、1997年を境に、GDPの停滞、財政赤字の急増、月給や実質賃金の低下、非正規雇用の増加、少子高齢化と単独世帯の増加の動きが止まらず、地域衰退が続いています。かつては世界的にもトップレベルを誇っていた日本の産業界ですが、まず「衰退している」という現実をしっかりと直視して対策を打っていかなければ近い将来、いずれ国際的に大きく後退する事態になりかねない ということです。
問題なのは、こうした深刻な現実を、ほとんどのメディアが国民に対して伝えていないことだ と、付け加えて強調されました。
「新しい農業はどうあるべきか」
衰退の一途をたどっている日本の産業界。農業も然りです。そこから、今後日本が歩むべき農政、新しい農家経営モデルについてどんなビジョンを描くかが、重要であると金子先生は語ります。
新しい農家経営モデル、、、「6次産業とエネルギー兼業農家」 というワードを用いて、めざすべき日本農業、農政のビジョンが以下に示されました。
①大規模専業化のドグマから解き放ち、生きていける誇り高い職業に。
②6次産業化:マーケットイン型 ▶加工による付加価値化と販売価格の安定 etc
③エネルギー兼業農家へ:工場誘致策の限界 ▶ソーラーシェアリング ▶風力
▶小水力とマイクロ水力 etc
④地域農業が生き残る人材パターン ▶地域が1つの経営体
▶誇りをもてる農業が後継者を生む etc
そして、こうした新しい農家経営モデル確立に欠かせないのは、女性の存在だそうです。 命を生み育てる女性の多くは、子どもたちにはなるべく安全・安心な食べ物を与えたいと考えます。その女性の感性が活かされることこそ、輸入食品に頼らずに地域農業を守り発展させる上で不可欠なのだと語られたことも印象的でした。