喜ばしいに違いないのですが…【きんごの日誌・2019年1月23日】

2019年01月24日 00時01分24秒 by

今シーズンの素麺作り、ちょっとグレードアップしたみたいです。カケバといわれる機械で、二本の棒に麺線を綾掛けにするのですが、バカに調子が良いのです。この工程で製品となる麺の太さが決まってしまいますから、初めから最後まで均一の太さで掛け続ける事が理想ですし、作業の効率からも途中で麺線が切れるなどということはあってほしくないのです。

素麺を作り続けて三〇年になりますが、毎日この工程について、もう少しでんぷんの振りようを控えたほうが良いのだろうかとか、「寝かす時間」が足りなかったのだろうかとか、あーでもないこーでもないの試行錯誤が繰り返されてきたのです。理想に近づいたと思っても、次の日に裏切られることはしょっちゅうです。さすがに始めた頃と比べれば格段に進歩しているとは思っていましたが、満足の域には遠いとも感じてきました。

それがどうしたことか、今シーズンはこの工程についてあれこれ思いを巡らさなくても、結構狙ったような結果になるのです。昨シーズンまでの苦労は何だったのだろうか思うほどです。ガケ道の伝い歩きから解放されて広大な野原を駆け回る喜び、などと言ったら大袈裟ですが、でもそんな感じです。

問題はそうなった原因がまるで分らないことです。まったく心当たりがありません。昨年と同じように作業しているのにどうして調子が良いのか?同じ肥料を同じように施しているのに「今年のコメはめっちゃおいしいね~」と言われて戸惑いを覚えるのと同じ感じです。

どんなに経験を重ねても完全には意のままに操れないものを、何とか言うことを聞かせようとあくせくするのが素麺職人なのかな、などと思ってしまいます。

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