7月15日、日本共産党創立98周年記念講演会がオンライン配信されました。
今、日本共産党が目指している社会とは?
お時間あるときに動画もご覧ください。
7月16日(木)の「しんぶん赤旗」の記事をご紹介します。
日本共産党創立98周年記念講演会
コロナ危機をのりこえ、新しい日本と世界を――改定綱領を指針に
志位委員長が講演
日本共産党は党創立記念日の15日、党本部で党創立98周年記念講演会を開き、オンライン中継しました。志位和夫委員長が「コロナ危機をのりこえ、新しい日本と世界を――改定綱領を指針に」と題して講演。コロナ危機の体験を通じて、国民意識の中に前向きの大きな変化が生まれているとして、「改定した綱領を羅針盤に、危機と激動の時代、歴史を前に進めるために、ともに歩もう」と呼びかけました。
同志社大学教授の岡野八代さん、翻訳家の池田香代子さん、憲法学者の小林節さん、政治学者の白井聡さんのビデオメッセージが紹介されました。(メッセージ)
新自由主義の転換旗印に、野党連合政権への道を
四つの角度
一、新自由主義の破綻――自己責任の押し付けでなく、連帯の力で未来を開こう
二、資本主義という体制そのものが問われている
三、国際社会の対応力が試されている――諸政府と市民社会の連帯で危機の克服を
四、人類史のなかでパンデミックを考える
新型コロナ感染症のパンデミック(世界的大流行)のさなかに迎えた党創立98周年の記念日。志位氏は日本と世界の現局面を概括するとともに、国民の苦難軽減という「立党の精神」に立って、国民の命とくらしを守りぬくため全力をつくすと表明しました。
その上で新型コロナ危機が、世界でも日本でも、社会の脆弱(ぜいじゃく)さや矛盾を明るみに出し、危機を体験して新しい社会への模索が起きていると指摘。「コロナ危機をのりこえてどういう社会をつくるか」を、日本共産党第28回大会で一部改定した綱領を指針に、四つの角度から語りました。
明らかになった新自由主義の破綻
第1の角度は、新自由主義の破綻が明らかになったことです。
志位氏は、「すべてを市場原理にゆだね、あらゆる規制を取り払い、資本の目先の利潤を最大化していく。社会保障をはじめ公的サービスを切り捨て、自己責任を押し付ける。米国を震源地としながら、この40年あまりに新自由主義という“疫病”が世界にまん延しました」と述べ、「それが社会全体をもろく、弱いものにしてしまった」と告発しました。
多くの犠牲者を出している先進各国からは新自由主義の破綻が共通して見られると述べ、「全くの過ち」「失敗に終わった処方箋」などの批判や自己否定が相次いでいると指摘。新自由主義の元祖・サッチャー元英首相の言葉を真っ向から否定したジョンソン英首相の言葉を示し、「コロナ危機を経験して、新自由主義の居場所は、もはや世界のどこにも残されていないことを象徴的に語っています」と述べました。
日本の実態はどうか。志位氏は、「1980年代以降、日本に輸入された新自由主義の路線が、社会のあらゆる分野から『ゆとり』を奪い、脆弱にしてしまった」と述べ、医療と公衆衛生の面から指摘しました。
医療では4~5月、首都圏など各地で「医療崩壊の瀬戸際」との訴えが相次いだ背景に、欧州に比べてICU(集中治療室)も、医師数も極めて少ない実態があると指摘。「1980年代の『臨調行革』を起点として、長年にわたって医療費削減を強引に進めてきた結果にほかなりません」と強調しました。
公衆衛生では、保健所が深刻な疲弊状態に陥ったのも、リストラが及んだ結果だと指摘。「業務効率化」や「地方分権改革」により全国の保健所数は1990年の850カ所から、2019年の472カ所へと激減したと批判し、保健所体制の抜本的強化は急務だと力説しました。
志位氏は、5月のオンラインイベントで、立憲民主党の枝野幸男代表と対談した際、枝野氏が新自由主義を強く批判し、「自己責任から抜け出し、人々が支え合い、適切な再配分を行う社会と政治のあり方が必要です」と述べたことを紹介。「新自由主義に反対し、連帯の力で未来を開くという方向での一致が得られたことは重要な前進です。新自由主義からの転換という旗印を、市民と野党の共闘の旗印に掲げ、共闘をさらに豊かに力強く発展させ、野党連合政権への道を開こう」と呼びかけました。
その上で、「コロナ危機を克服して、どういう日本をつくるか」として、(1)ケアに手厚い社会をつくる(2)人間らしく働ける労働のルールをつくる(3)一人ひとりの学びを保障する社会をつくる(4)危機にゆとりをもって対応できる強い経済をつくる(5)科学を尊重し、国民に信頼される政治をつくる(6)文化・芸術を大切にする国をつくる(7)ジェンダー平等社会をつくる―という七つの提案を行いました。
志位氏は「この提案を貫く考え方は、経済効率最優先から、人間が生きていくために必要不可欠なものを最優先にする政治に切り替え、自己責任の押し付けでなく、人々が支え合う社会、連帯を大切にする社会をつくろうということです。こうした方向を、市民と野党の共闘が共有し、みんなが希望をもって生きることができる新しい日本をつくろうではありませんか」と訴えました。
また七つの提案は「財界中心」「米国言いなり」という日本の政治の二つのゆがみと深い関わりがあると強調。日本政治の根本的変革に向かって進むことを呼びかけました。
資本主義の体制そのものが問われている
第2の角度は、世界資本主義の矛盾です。
志位氏は、改定綱領で、世界資本主義の矛盾の集中点として、「貧富の格差の世界的規模での空前の拡大」「地球的規模でさまざまな災厄をもたらしつつある気候変動」の二つを特記したことを紹介。「この二つの矛盾がいかに深刻かが明らかになり、資本主義を続けていいのかという重大な問いを、人類に突きつけている」と語りました。
「格差拡大は、パンデミックのもとで急速に加速しています」と語った志位氏は、「一番犠牲となっているのは、貧困のもとに置かれている人々です」と指摘。世界で問題となっている「命の格差」を告発するとともに、日本でも、ネットカフェ難民を路上生活に追い出し、非正規雇用やフリーランスで働く人、ひとり親世帯から仕事と収入を奪っていると語りました。他方で、資産10億ドル以上の億万長者の資産が4カ月で2・2兆ドル=約230兆円も増えており、「富裕層はあっという間に資産を急増させ、打撃を回復した」と告発しました。
もう一つが、地球規模での環境破壊です。
この30年間に少なくとも30の感染症が新たに出現。NGO・世界自然保護基金(WWF)の「報告書」で、動物由来感染症の主要な要因として、(1)森林破壊などにより生じた新たな病原体との接触(2)自然との調和を欠いた農業や畜産の拡大(3)病原体を拡散させる野生生物の取引――を挙げていることを紹介し、「ここには、最大の利潤を得るためには生態系の破壊もためらわない資本主義という体制そのものの矛盾が深刻な形であらわれているではありませんか」と述べました。
その一方で、志位氏は「資本主義の限界」が語られ、この制度をのりこえた社会主義への希望が語られていると指摘。京大総長・山極寿一氏が「誰もが資本主義は限界だと感じているのではないか」と述べ、『フォーブス』が、米国の若者層の意識が変化し、「47%が社会主義に賛成し、46%が資本主義に賛成した」と、社会主義賛成がついに多数になったと報じたことを紹介。「この二つの大問題は、資本主義の枠内でも解決のための最大の努力を注がなければなりません。同時に、資本主義をのりこえた未来社会――社会主義・共産主義に進むことにこそ、問題の根本的解決の展望がある。この希望を大いに語り広げよう」と述べました。
国際社会の対応力が試されている
第3の角度は、新型コロナ・パンデミックに国際社会がどう対応するかという問題です。志位氏は、「いま重大なのは、パンデミックのなかで、米国と中国の体制的な矛盾が噴き出し、両者の対立が深刻になっていることです」と語りました。
米国では、トランプ政権が「自国第一主義」でパンデミック克服の国際協力に背を向け、WHO(世界保健機関)からの脱退を通知したと批判。さらに構造的な黒人差別が、コロナ危機のもとで重大問題となっていると述べました。
他方で、中国は人権侵害と覇権主義という体制的問題点が、パンデミックを通じてむき出しになっていると指摘。コロナ対応の初動の遅れが、人権の欠如という体制の問題点と深く結びついていること、「香港国家安全維持法」の強行が国際協力に障害を持ち込んでいることを詳しく述べました。
志位氏は、米中による障害のもとでも「パンデミック収束にむけた国際社会の連帯と協力は、一歩一歩、前進しています」と強調。4月2日の国連総会決議、5月19日のWHO総会の決議、7月1日の国連安全保障理事会の決議などを具体的に紹介しました。
その上で(1)医療・保健における大規模で包括的な協力(2)途上国に対する国際的支援(3)世界の紛争地での即時停戦、核兵器廃絶をはじめ軍縮を行い、コロナ対策に力を集中すること(4)富裕層などへの課税でコロナ対策の財源をつくるなど、より公正な世界をめざすこと―の四つの方向で、国際社会の協調した取り組みの前進を呼びかけました。
志位氏は、国際社会が政治的立場の違いを超えて、感染症対策に国際協調で取り組んできた歴史があることを具体的に紹介しながら、「世界の多くの国ぐにの政府と市民社会の協力を発展させることを心から訴えたい」と強調しました。
人類史の中でパンデミックを考える
第4の角度は、人類史の中でパンデミックを考えることです。志位氏は、多くの感染症のパンデミックに遭遇するなかで、「社会の矛盾を顕在化・激化させ、時として、歴史を変える契機になりうる」と指摘しました。
その一つとして、14世紀のペスト(黒死病)のパンデミックを一つの契機として、農奴の自由農民化が進行し、農奴制が没落した歴史を紹介。またマルクスが『資本論』で、ペストによる人口激減のもとで、農業労働者の賃金高騰を抑えるための「労働者規制法」(1349年)が、「資本家と労働者の数世紀にわたる闘争」の結果、労働者自らの権利を守る立法へと転化したことを克明に描いたことを語りました。
歴史を変える契機という点では、米国で起きた警官によるジョージ・フロイド氏の暴行死事件への抗議行動が全米、欧州、世界へと広がり、「抗議の内容が、植民地主義、奴隷制度、奴隷取引に対する歴史的抗議、歴史的見直しを迫るものに発展している」と述べ、この背景にパンデミックによる共通の体験があると指摘。ベルギーでは国王が過去の植民地支配の反省を行うなどパンデミックが歴史を変える契機となり、進歩が加速していると述べました。
最後に「日本もまた、歴史の大きな転機のなかにあります」と述べた志位氏。「コロナ危機の体験をつうじて、国民の意識のなかに、前向きの大きな変化――一過性でない、深いうねりのような変化が生まれているのではないでしょうか。そうした前向きの変化を一つに集め、人々の連帯の力で、コロナ危機をのりこえた先には、新しい日本と世界をつくろうではありませんか」と呼びかけました。
その取り組みを進めるうえで、改定した日本共産党綱領は、確かな羅針盤になると強調。日本共産党への入党を心から訴えるとともに、「危機と激動の時代、歴史を前に進めるために、ともに歩もうではありませんか」と呼びかけると、拍手に包まれました。 (転載おわり)
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