再び経澤信弘さん(郷土料理研究家)がやって来て、緑の粉末の入った袋を手渡しました。「これを1パーセントの割合にして素麺作ってもらえないでしょうか?」
アシツキの粉末です。万葉の時代に珍重されたという川の藻、保存が難しいのだけど、乾燥の技術があみ出されて持ってこられるようになったのだとか。
昨年は3グラムの袋だったので、せいぜい二人前ほどの素麺にしかなりませんでした。はさに掛けて干し上げた半生のを手渡したのですが、それきりでした。量が少ないので、作った当方の試食の分も無かったし、食した感想も聞いていません。外見からしてあまり美味しそうとは思わなかったので(笑)、電話して聞いてみることもしませんでした。手延べの麺はつるつるしこしこ、滑らかでコシのある食感が魅力なのですが、乾燥したアシツキの粉末を混ぜると団子がざらつきます。つるつるを打ち消すような感じで、ちょっとどうかなと思ってしまったのです。
こんなものが伸びるのかなと不安になりますが、いつもの工程に乗せると不思議についてきます。ただし今回は昨年より混ぜる割合が多かったので、普通どおりは最後の伸ばしの一歩手前まででした。最後の工程では三分の一ほど伸ばして二時間休ませる、また伸ばして一時間休ませる、これでどうだと伸ばすと、縁の方の麺は何本か切れてしまいましたが、大半は最後まで伸びてくれました。ひとまずやれやれです。が、やっぱり伸びたとはいえ、このパサパサ感、う~ん?
アシツキにこだわる経澤さんは、イタリア料理店の姪っ子さんにスイーツを作らせています。写真を見るとたっぷり水分を含んだわかめのよう、ゼラチンのような食感が良いのだとか・・・
わかめ? まてよ、ひょっとして素麺をゆでると乾燥したアシツキが戻ってゼラチン質に?だとしたら不思議な面白い食感かも!
などとちょっと思いましたが、そんなにうまくはいかないのじゃないかな、やっぱり、パサパサはそのままなのかな。だとしたら大友家持の詠んだ
「雄神(おがみ)川 紅(くれない)にほふ娘子(おとめ)らし 葦附(あしつき)とると 瀬に立たすらし」
を思い出しながら、万葉の空気を楽しむという事なのでしょうか。