障害福祉計画について意見を出しました。論点は数々ありますが、
計画の立て方、とくに見込みと目標の設定、到達点の評価について疑問を述べました。
施策展開については、入所施設の必要性について集中的に言わせてもらいました。
第6期名古屋市障害福祉計画・第2期名古屋市障害児福祉計画(案)についての意見 2021.2.10
この計画は、障害者に提供する福祉サービスについて、必要量の見込み及び確保策を示すことが主眼である。全体を読んで感じたことは、パブリックコメントを求めている他の計画案に比べて、現在の計画期間の進捗状況では、目標あるいは見込みと実績の乖離が大きいものが目立つことである。にもかかわらず、その原因を掘り下げて考察しているようには読み取れない。目標と見込みの定義があいまいで都合の良いように使われている。目標達成のために「対応」と「方策」と出てくるが違いがわからない。計画の組み立て方自体を検討するが必要である。そのうえで、以下数点、意見を述べたい。
進捗率16% 入所者の地域生活への移行 目標そのものを見直すべきである
福祉施設入所者の地域生活以降は1132人の入所者中105人の目標に対して17人にとどまっている。施設入所者の重度化・高度化によりなかなか進んでいない、としている。地域生活への移行といっても自宅への移行はごくわずかで、グループホーム・ケアホームへの移行が多数を占めている。また精神障害差に限れば施設入所者は逆に増加している。
第6期の目標は、地域生活移行を1088人のうち46人が移行するとしている。目標を半分に切り下げたのはなぜか、ニーズ調査の結果としているが、第5期もニーズ調査から105人の目標を示したのか?目標算定の方法を変えたのか、計画からは読み取れない。
一方では施設入所希望者(待機者)が多い状況があるとしながら、その状況を示す関連数値は具体的に記述されていない。
「地域生活への移行」という目標設定自体を見直すべきである。現実にはグループホーム利用者が増加していることも踏まえ、自宅、公営住宅、アパート、グループホーム、入所施設など多様な選択肢から本人の意向に沿った住まいと暮らし方を選びとれ、社会がその選択を支える支援体制を構築することを目標にすべきでなないか。わずか16%の進捗状況という結果から、この目標自体をもっと全面的に見直すことを求めたい。
進捗率16% 精神障害者への退院促進 身体拘束の解消、通院医療費の無料化こそ行うべきである
精神病床での長期入院患者数についても一年以上の長期入院患者数を1808人まで減らす目標に対して進捗率は16%となっており長期入院患者はいまだに2千名を超えている。とくに65歳以上では進捗率2.7%にとどまっており、精神病院に高齢患者が長期に滞留している様子がうかんでくる。
一方で精神障害者数の増加が続いている。自立支援医療(精神通院医療)は2006年から2019年で1.9倍、精神障碍者保健福祉手帳所持者は3.1倍に伸びている、としている。
第6期ではどうか。早期退院率の目標は良いとしても進捗率が16%の長期入院患者数は1808人と前期と同じ目標である。国の基本方針を参考にしたというが、それでよいのか?
精神病院での身体拘束の問題、愛知県下で名古屋市をはじめ8市町村だけが精神通院医療に自己負担を強いている問題など、この機会にあらためて検討していただきたい。
地域に返す目標だけを独り歩きさせず、入院中の人権侵害を根絶し、居心地の良い療養環境を整えること、退院後の治療を支える通院医療費の無料化に踏み出すこと、など入院でも在宅でも安心できる療養環境の実現こそ目標に据えるべきである。
障害福祉サービス・訪問系サービス ヘルパー確保のための処遇改善の計画こそ持つべきである
訪問系サービスについて、実績が見込み量を下回っているのが現状である。これは利用したいニーズが見込みよりも少ないことを意味しているのだろうか。そうではなく「ヘルパーの確保に苦慮している状況があります」とあるように、ニーズがあるのに必要なサービスを提供する体制整備が追いついていないことが課題と考える。新計画では、実績に基づき、伸びを換算し、利用量を見込む、としていることは当然である。問題は、確保方策が貧困なことである。イメージアップでヘルパーの確保はできない。登録型ヘルパーの不安定さはコロナ禍でいっそう鮮明になった。ヘルパーの雇用を安定させ、処遇を改善する思いきった支援策こそ必要である。そのための計画こそ書きこむべきである。
居住系サービス グループホームへの流し込みでなく入所施設の待機者解消計画こそ持つべきである
共同生活援助=グループホームの利用が見込みを超えて増えている。問題は、他害行為や異物摂食などのトラブルがおおい方など、重度障害の方が利用を断られることがあることです。重度障害者の利用を可能とする方策をとるとしているが、それで十分だろうか。居住系サービスでは、「入所施設の新たな整備は想定せず」としているが、一方で、「引き続き入所希望者(待機者)が多い状況」としている。第6期においても新たな施設入所者数を29人と見込んでいる。つまり施設入所へのニーズは現実に存在しているのである。2019年度は施設入所待機者368人と聞いている。少なくとも、次期計画には入所待機者数の現状と目標(もちろん入所者数の増加数)をはっきり書き込むべきである。
機能を高める施設を増やしたとしてもグループホームだけで居住系サービスを担うことはできない。山間へき地にある施設と違い、名古屋市域では入所施設も市街地に、地域とともにある。一人勤務が多いグループホームよりも職員集団が形成でき、入所者を複数の目で見守ることができる入所施設の方が職員も成長できる、との声もある。
入所施設も「将来の多様な生活像の一つ」として積極的に位置づけ、整備目標をかかげるべきである。
地域生活支援拠点 緊急時の受入れ実績など機能の活用状況をまず明記すべきである
地域生活支援拠点の整備には大いに期待する。ところが整備の対応は、既存施設の組み合わせだけのように読める。とくに緊急時の受入れ・対応=短期入所はグループホームで可能なのだろうか?新たな入所施設とセットで整備する方策も検討すべきではないか。生活支援拠点施設の施設数は掲載されているが、利用実績については記載がない。緊急時の受け入れ実績など、現状について詳細な数値を記載すべきである。
児童発達支援センター 希望するすべての子どもは全て通園できるよう受入体制を整える
希望する全ての児童を受け入れる、という考え方は大いに評価する。そのための受入体制を整えるために職員の処遇を改善し、施設経営が安定的に行えるように報酬の在り方等、現場から指摘されている課題を受け止め、必要な改善に取り組んでいただきたい。児童デイサービスなどの質の確保をすすめるためには、安定した職員集団の確保と成長・育成がかかせない。適切に配置する、との名の下で報酬を削減し、施設経営と職員の処遇に悪影響がでないようにしていただきたい。