名古屋市市民活動促進基本方針改定版(案)についての意見 2021年12月22日
山口清明
市民活動団体の活動を、行政としてサポートしていくことは引き続き重要な課題である。
現状分析のうえで気になる点は活動する市民活動団体数の推移である。概ね3,500団体が活動しているとされているが、新規設立と活動休止解散の団体数を調査結果として示していただきたい。とくに活動休止や解散の理由と原因を分析し、支援の方向を探ることも必要ではないか。分野ごとの傾向をつかむことで市民の関心やニーズが高い分野も見えてくる。災害ボランティアコーディネーターなどの事例は紹介されているが、活動がうまくいかず苦労している現場の様子なども紹介することで、どんな支援が必要か、具体例が示せるのではないか。
今後の方向性について二つ意見を述べる。
参加の促進について、社会教育・生涯学習との連携・協同を意識的に行うべきである。
名古屋市では、生涯学習センターでの連続講座などから多くの貴重な市民活動を生み出してきた。市民が様々な社会問題、地域課題に関心を持つ場、仲間づくりの場として、所管部局の違いを超えて連携すべきである。
多様な主体との連携・協同の促進について、企業との連携の促進がうたわれているが、同じように広義の市民活動との連携を位置づけるべきである。
一つは、協同組合、労働組合、社会福祉法人などの非営利組織との連携。市民の自主的活動形態として、自らの組織を作るケースだけでなく、病院ボランティアや保育園の保護者会など、組織の支えも受けながら自主的に活動しているケースも少なくない。組織の中のことだからとせず、そういう活動にも光を当て、連携・交流できるようにしていただきたい。
もう一つはいわゆる伝統的な地域団体(ここにはPTAもふくめて考えたい)との連携である。自治会町内会はじめ、自主的で、構成員のニーズにこたえる組織運営のノウハウと人材を必要としている地域組織が少なくない。市民活動団体での経験が地域組織の活動にも活かせるような連携・協同を意識的にすすめていただきたい。
市民の自主的活動という視点から、行政の所管局の垣根を越えて、共通する課題をかかえた市民をサポートし、協同の輪をいっそう広げてほしい。スポーツ市民局の所管内で完結する活動ではないことに留意していただきたい。
地域の社会的課題に市民が気づき、ジブンゴトとしてとらえることが活動の第一歩であるとの指摘は深く共感する。しかし市民が気づいた社会的課題は、すべてが市民活動だけで解決できるものでない。行政による支援が、特定の公職者や政治活動と一線を画すことは当然だが、市民は主権者でもある。社会的課題の解決には請願権の行使など主権者としての行動が必要なことも少なくなく、主権者としての成長を促す教育的配慮もぜひ意識していただきたい。政治離れの促進ではなく、市民としての権利行使を学ぶ機会にしていただきたい。