名古屋市博物館の魅力向上基本計画(案)について 2022年1月27日
名古屋市博物館の基本理念を踏まえつつ、老朽化と収蔵・展示スペース不足などへ対応することは必要であり、その手法と内容も、直営方式による既存施設のリニューアルを軸とした堅実な計画案だと考える。地味な分野だが,名古屋の文化を支える社会基盤の軸としてその魅力を向上させることを期待する。そのうえでいくつか要望を述べたい。
名古屋市博物館は,総合博物館であるが、その中心は「歴史」への理解と関心を高めることにある。そのことを踏まえたうえで、「未来をつくる」ことが新たなコンセプトに掲げられている。総合的な博物館として充実発展させることに異議はないが、名古屋の歴史文化の故か、名古屋市博物館には目玉となる展示がいまひとつはっきりしないのが残念である。立地もとくに特長がない。各都市の博物館をみると、北海道は開拓の歴史、神戸は国際貿易のまちしての展示をメインにしている。仙台や大阪は城、横浜は港、と立地そのものが都市と博物館の個性も表している。名古屋市博物館はいかにも総花的である。
名古屋尾張地域の個性的な博物館との協力連携で、名古屋エリアの総合的理解と魅力を発信する、そのネットワークの中心として名古屋市博物館を位置づけてはどうだろうか。
古代史では、見晴台考古資料館、志段味古墳ミュージアム、あいち朝日遺跡ミュージアム。中世近世では,蓬佐文庫徳川美術館、名古屋城、秀吉清正記念館。近代現代では、市政資料館、名古屋都市センター、昭和日常博物館(北名古屋歴史民俗資料館)、そしてトヨタ産業技術記念館、名古屋海洋博物館、戦争に関する資料館、ピースあいち。そして災害に関しては名古屋大学減災館、港防災センター、南図書館伊勢湾台風資料室。
歴史と文化を学べる個性的な博物館群を紹介しながら、トータルに名古屋の歴史と文化,現在と未来を学べるセンター博物館としての役割を果たすべきである。学芸員の研修と交流、情報交換のセンターとしての役割も果たしてほしい。
そのうえで、ここにしかない、ここでしか見られない展示をぜひ一工夫して欲しい。現状の常設展示ではみな中途半端に見えてしまう。
そこで現状の人文歴史中心の展示に加えて、自然科学的な展示と収蔵にも力を注いでほしい。災害とも絡むが、木曽三川や伊勢湾をふくむこの地域の地形、災害史、気候変動,環境/公害などの分野である。科学館やヱコパル名古屋、東山動植物園や名古屋港水族館、また大学等の研究機関とも連携して、未来の課題を考える場所にしてほしい。
名古屋城とその城下町として名古屋の歴史を描く、三英傑ゆかりの地として描くのは観光戦略上はけっこうだが、博物館全体が名古屋城中心史観で固まらないようお願いする。
具体的な設計について
東館と本館は簡易な形でつなぐべきである。前庭,東庭はおもいきり開放的な空間にしてほしい。駐車場は市大病院と連携して互いの休館日に相互利用できるよう工夫してほしい。