反対討論 議題33号 平成31年度山県市一般会計予算
日本共産党の福井一徳です。
自治体は、日本国憲法の地方自治の原則にもとづいて「二元代表制」を取っているのは当然のことですが、執行機関と独立・対等の関係にある議会には、常に執行機関に対する「政策提案」「監視と評価」の機能を果たすことにより、緊張関係を保つことがもとめられます。具体的には執行側から提案される議案に対し、質疑や一般質問、討議の場がそれにあたります。3月19日の中日新聞に「首長提案、素通り6割」という記事が載っていました。私は市議会の役割を果たす為に、質疑や一般質問に続いて、積極的に討論に参加することを最初に申し述べて、反対討論を行います。
平成31年度山県市一般会計予算に関して、いくつかの具体的な予算について触れながら、総じて一般会計予算についての反対討論をいたします。予算案では、地域経済牽引事業について、昨年の4100万円に続き、9100万円が計上されています。水栓バルブ製造業リノベーション事業として、「生産性の向上」「人材確保」「将来性の向上」という3つの柱で「水栓バルブ産業の集積を活用した成長、モノづくり分野」に挑戦する積極的な予算になっています。私は議員になった当時から、ナノシャワーの付加価値技術から医療分野への新規開拓、水栓バルブの下請工場の廃校活用による起業支援構想など、地場産業の支援を重点課題にと訴えてきました。新規設備投資への補助の大幅増額や、大学等共同研究補助金が500万円から1800万円に引き上げられ産官学の協同による山県市の産業を支える体制がとられています。この事業が山県市の新たな雇用の創出に結びつくことを期待います。また、子育て支援や高齢者福祉支援がこのような事業革新とリンクし、住みやすい山県市につながることが求められています。
しかしながら、子育て支援に関して「保育の質の維持」を進めるうえで、保育士の確保と労働環境、臨時保育士の労働条件の改善、正規保育士の比率の向上などの中長期的な施策が求められるなか、一般質問の中でも市長は「保育の民営化」に舵を切ろうとする姿勢を崩していません。今まで培ってきた子育て支援の流れを受けた「山県市の保育の質」は、正規・臨時保育士の区別なく関係者全員の努力で作り上げてきたものです。同時に、その根底に「すべての保育園が公立保育園である」ことの運営上の強みが生かされていることを自覚すべきと思います。児童福祉法24条1項の山県市の保育園は市町村の保育実施責任に基づく運営をしていますが、民営化されている各地の児童福祉法24条2項の保育園は保護者と事業者の直接契約による運営で、施設や保育士配置の基準が緩和され、公定価格も低く、保育の質やニチイ学館の事例の様に運営の安定性への自治体の責任が不明確です。山県市の保育の質の維持にとって基本方向を踏み外さない事業をもとめたいと思います。
こうした中で私が問題視しているのが、予算にもある「指定管理」の予算の在り方です。指定管理者制度の運用に関する総務省自治行政局長の通達では、「公共サービスの水準の確保という要請を果たす最も適切なサービスの提供者を、議会の議決を経て指定するもの」と書かれています。議会の議決をうるためには、候補者の「事業計画書」など必要な書類を添付し、候補者選定委員会の「適当とする判断」に至る審議経過と結果に関する議事録は当然審議資料としてつけ議案として提案すべきであります。ところが、選定に至った「候補者選定委員会」の審議の経過を記す資料は一切ありません。地方自治法第244条2の第6項の規定は単なる手続き上のことを指しているのであって、総務省通達にある「議会の議決を経て指定する」とあるのは、単なる承認ではなく「適当でないと判断して議会が否決すること」も想定しています。議会は候補者選定委員会の承認機関ではありません。今回、1800万円の改修工事を含む2387万円が予算計上されている「グリーンプラザみやま」は条例改正で利便性の向上が図れる内容になっていますが、辺地債を活用し山県市民の税金で施設改修等がなされるにもかかわらず、市民の利用における「部分的なメリット」などは考慮されません。また、一昨年12月市議会で手続き上の問題点を指摘した「四国山香りの森公園・会館」については2017万円余の指定管理料、昨年12月市議会で指定管理の議決に際して、議決に係る審議資料の提出がないなど手続き問題で指摘をした「社会体育施設指定管理委託事業」に4305万円。この金額は平成35年までの委託期間の固定額です。まさに、指定管理の在り方が問われなければなりません。
さらに、補助金についても触れますが、シルバー人材センター補助金は28年度637,4万円、ワンコインサービス事業の支援と称して29年度710万円に増額、30年度は介護事業分野への進出により990万円へ増額、そして31年度は1090万円の予算になっています。何とこの4年間に補助額が637万円から1090万円と171%の大幅増額になっています。「草取りを頼んだら、大勢で駆けつけてたくさんお金を請求された」など、シルバー人材センターに対する明朗会計を望む声も寄せられています。28年度の事業報告書では派遣契約賃金4046,6万円に対し、派遣契約手数料が1189.8万円と派遣業務が大幅に伸びています。また山県市シルバー人材センターは全国からの見学者も絶えない事業展開とのことです。経常収益1億6500万円という大規模な「山県市シルバー人材センター」に市民の税金である補助金を、増額し続ける必要がどこにあるのか、その根拠をお尋ねしましたが、納得できる根拠は得られませんでした。およそ市民の皆さんも納得できないと思います。
個別予算で、例えば情報セキュリティポリシー改訂支援業務委託料については、マイナンバー普及をめざし、見直しに伴う調査研修となっています。そもそも普及率が一けた台で普及の自治体の目標もなかったのもですが、今後は普及を各自治体に強制する可能性もあります。地方分権の趣旨からすれば従う義務もないと考えられます。マイナンバーカードは個人の情報を紐付しカードが紛失したら大変なことになります。「紛失しても問題はなかった。だから安心して勧めてください」という議論もありましたが、そもそもマイナンバー制度は今後戸籍、パスポート、預貯金、医療、介護、病歴などの健康情報などをマイナンバーの利用範囲に拡大し、国民を12ケタのマイナンバーで情報管理する、これを大企業の利用に供するという、かつて国民から総批判を浴びた憲法違反の総背番号制度の横文字版です。マイナンバー制度は現住基ネットと比べものにならないほどの個人情報が収集され、これら個人や法人のプライバシーが丸裸にされる危険性があります。これらの情報がひとたび流出すれば、計り知れない被害を招く致命的欠陥制度です。現実に日本年金機構で情報漏えい事件が起きています。一方でカード更新時期が迫り、保有率はさらに減少する見通しです。だからこそ、制度そのものとマイナンバーカード普及につながる予算について反対するものです。
次に、栗ゾーン整備事業について、整備工事280万円、管理委託240万円がそれぞれ計上されています。審議の中で、残念ながらこの事業が長期的な「利平栗の復興」の事業ではなく、公園跡地の再利用程度のもので、山県市の「利平栗発祥の地」の復興という大きなビジョンに位置づけた事業ではありません。これでは、「とにかくやった」程度のもので、子どもの学習体験であれば「現在の事業者」にご協力を得て「栗ひろい」体験はできますし、そうした取り組みが地域の人々との学習交流事業にもなると思います。したがってこの事業についても賛同できません。
更に、大桑椿野トイレ設置工事(管理委託、水道加入金含む)について総工事費1887,1万円が計上されています。予算一覧表を見ると「大河ドラマ」の一環として「歴史探訪に大桑城址等を訪れる観光客等のアメニティ向上のため、城山の麓に公衆用トイレを設置する」と記述されています。建設課で工事予定場所の地図をいただき現地を見てきました。はじがみ林道の頂上には古城山の登山口に「男女別簡易トイレ」が設置されています。富永側から登る「みやまの森」第一駐車場に大桑城址への登り口があります。今回の公衆トイレは「グランドゴルフの場所にトイレがないから設置してほしいという要望」もあると聞いています。今回大桑椿野トイレ設置を考えると、審議の中でも「設置場所については、水道工事にもお金のかかる奥ではなく、目立つ椿野苑入り口近くに場所の変更を検討できないか」という一致した議員の声が上がりました。こうした議会審議での意見は十分に尊重されなければなりません。「観光客等のアメニティ向上」という視点では、まちづくりの観点から、「おもてなし日本一」の心で、市内の他の「公衆トイレ」の維持管理、清掃業務を市として一括管理する部署を決め、現状のトイレ維持管理、清掃業務の窓口を一本化することも要望しましたが、「検討する」との答弁がされました。積極的に具体化が図られるものと思います。
道路改良事業については、「インターチェンジ周辺における、開通後の自家用車と歩行者等の行動において、交通事故や交通渋滞を回避するため、西深瀬地内の農免道路に歩道設置等の道路整備工事を実施するほか、市内各所の道路改良を実施する」とあります。しかし、インターチェンジ周辺というのであれば富岡橋以東の新川にかかる深瀬橋、富岡小学校前の信号の橋など当面の間インターチェンジに美山方面から向かう場所こそ、市民からの要望もよく出されているし、対策が緊急と考えられます。また歩道と言えば、関本巣線の八京付近から梅原、伊自良方面の県道沿いこそ一刻も早い整備が求められます。農免道路が重点的に整備されていくように感じます。市長答弁では鳥羽川改修と一体に冨岡橋の改修を進めるとのことでしたが、富岡橋以東の整備は結局進めなければなりません。新川にかかる深瀬橋含めた道路整備こそ先行して予算計上し着工するべきです。
以上の観点から、積極的に評価する予算も含みながら、一方で市民の立場から見れば問題点を指摘せざるを得ない事業が含まれています。従って、以上述べたように、平成31年度山県市一般会計予算に関しては、反対の意思を表明し、反対討論を終わります。